サントリー美術館に行ってきた。
「没後190年 木米」展である。
今回も前回同様スライドレクチャーは落選…。
そして、いつもはゆったりと鑑賞できる「メンバーズ内覧会」、ほぼ独占状態で作品を眺められるくらいなのだが、本日は、空いているところを探して鑑賞、という感じ。人気の展覧会かも。
木米(もくべい)は、江戸時代後期の陶工であり画家である。
展示作品もバラエティー豊か。
「色絵金彩菊夕顔文茶碗」 木米(江戸時代、19 世紀) 滴翠美術館所蔵
解説パネルに「全体に刷毛で白化粧土を塗り、施釉焼成し粉引茶碗のような白地」とあった。確かに真っ白ではない白地。そこに赤、金、クリーム色、黄色の菊の群が描かれており、大変繊細で美しい。内部の側面と見込み部分に描かれているのは夕顔の蔓だそう。
小ぶりのお茶碗。茶箱か茶籠に良いかも…。
「色絵七宝文茶碗」 木米(江戸時代、19 世紀) 個人蔵
口縁部には宝文様の「七宝」と「方勝」が交互に色絵で描かれている。
これは白釉の上に黒釉を塗ったものだそう。
こちらのお茶碗は上記の「色絵金彩菊夕顔文茶碗」にすっぽり収まり、余裕まであるくらい小さい。
そして、上記の2つのお茶碗と同じ場所に野々村仁清の「色絵七宝文茶碗」が展示されていた。いやあ、とっても素敵な展示スペースであった。
木米は、煎茶の道具で高い評価を得ていたそう。
重要美術品「染付山水図煎茶碗」 木米(江戸時代、19 世紀) 個人蔵
小ぶりの煎茶碗。白地に藍色で山水人物図が描かれている。5客あり、1つ1つ絵柄が違う。山、楼閣、船、橋、歩く人、馬に乗る人、碁を打つ人…
ああ、良いなあ。「写し」があったら欲しい。
木米に関係する絵師たちの作品も良かった。
「木米喫茶図」 田能村竹田 (文政 6 年、1823年) 個人蔵
急須をかけた涼炉のそばに木米が茶碗を抱えて一息付いているところを描いたもの。ちょっと愛嬌がある雰囲気。
もちろん、木米の絵も良かった。
「製陶図」 木米(江戸時代、19 世紀) 個人蔵
中国の陶工が分業で作陶する様子が描かれている。
馬での薪の運び入れ、器の成形、器の乾燥、窯での焼成などなど描かれていた。
陶工たちの表情は、「点による目」と「への字の口」で表現されているだけであるが、なんだか可愛い。
この2作品は前期のみ展示だったので、本日訪れてよかった。
そして、最後の展示作品は、桐製の茶心壺。
解説パネルに「煎茶用の茶葉を入れる容器」とあった。
「栂尾・建仁寺・兎道図茶心壺」 木米(江戸時代、19 世紀) 個人蔵
「茶心壺」とあるが、壺の形ではなく四角い桐製の箱である。解説パネルには「三合一組の茶心壺」と書いてあった。
容器の側面に、「栂尾の紅葉」、「建仁寺の竹林」、「宇治の新緑」が描かれているとのこと。
こちらも前期展示のみ、後期は同じ名前の一合のものが展示されるよう。
木米の「白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉」(江戸時代、19世紀 布施美術館所蔵)を象ったフォトスポット。
風門の中からこちらを眺めているのは、中国・東晋の書家である王羲之。
後ろから見るとこんな感じ。
こういう細かい部分もしっかりと。
実物の「白泥蘭亭曲水四十三賢図一文字炉」は、実際に使うのがもったいないような凝った涼炉であった。