本書は、9月末に読んだ。
本書の訳者である藤井省三氏は、『浪漫都市物語 上海・香港’40s』には監修という形で関わっているが、本書ではご本人が翻訳をしていらっしゃる。
傾城の恋/封鎖 (著)張愛玲 (訳)藤井省三
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「訳者あとがき」に、
「27年前の翻訳では、読みやすさを優先して、段落を分け文章を分割し、敢えて意訳してもおります。このため原文の味わいを十分に伝えきれず、一部の不適切な訳も残しており、私は監修者としての非力を痛感しました。」とあった。
そして、
「段落と文章は原文通りとして、改段や句点など一切手を加えず、可能なかぎりの直訳を心がけました。」
確かに。本書を読んでいるときに、良い意味での「違和感」があったが、これだったのか!
続けて、
「このため1頁前後の長い段落も頻出しますが、緊張感溢れる張愛玲文体の緻密な華麗さをお楽しみいただければ幸いです。」
中国語は漢字だけで構成されており、漢字1文字を日本語に訳すとすると数文字になるだろう。
なので、「改段や句点」などに手を加えないとなると、非常に長い一文となる。
いやあ、これは大変。
「傾城の恋」は、
上田志津子氏の翻訳(『浪漫都市物語 上海・香港’40s』に収録の「戦場の恋」)
池上貞子氏の翻訳(『傾城の恋』)
と、3人の方の翻訳で読んでいることになる。
1度、3冊を並べて読み比べてみたいと思う。
又、本書に収録されている作品は、戦時下の都市が舞台であるが、読むと「カラッ」とした雰囲気がある。
藤井省三氏による「解説」に、
本書には上海に対する愛情を語った「さすがは上海人」、(中略)自伝的エッセーの「戦場の香港─燼余録」「囁き」も収録している。いずれもペーソスとユーモアに溢れた名エッセーであるが、それが日本軍占領下の上海で発表されたものであることに留意していただきたい。特に「戦場の香港─燼余録」では香港戦争の悲惨さについての描写は抑制されており、ほかのユーモラスな表現の陰に隠れがちであるが、それは日本軍による検閲を避けるために採用した苦肉の表現である可能性を秘めていることを忘れてはなるまい。
なるほど・・・。張愛玲氏のこの時代の著作にはそういう背景があったのか。
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食欲の秋である。
本日、岐阜県中津川の「すや」さんの栗きんとんを買おうと、高島屋の地下食料品売り場を訪れたが・・・売り切れ・・・。
ということで、「たねや」さんの栗きんとん「西木木」を求める。
美味しかった!