数日前に読了。本書は津村記久子氏の「やりなおし世界文学」で紹介されていたもの。
津村氏は加賀山卓朗訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読まれているが、
図書館には創元推理文庫の霜島義明訳があったので、こちらを借りて読んだ。
とても読みやすい翻訳だったように思う。
樽 (著)F・W・クロフツ (訳)霜島義明
推理小説なので、あまり内容に触れると「ネタバレ」になるので・・・。
物語は1912年頃、つまり110年くらい前のヨーロッパが舞台。
荷揚げ中に一部が壊れた樽の中から、金貨と遺体の一部かと思われるものが見えていて、海運会社の社員が会社の上部に相談した上で通報、さあ、樽の中身を改めるぞ、というところで樽がない!樽はどこだ!そして樽は見つかるが・・・。
当時は、スマートフォンも、防犯カメラも、鑑定のための各種検査も無かったわけなので、
謎解きも困難を極める。その分、読者は楽しめるわけだが、樽の中身が明らかになるのが文庫本の1/3くらいのところだった。
「ゆっくり話しているうちに樽が・・・」とか、「無くならないように樽を見張ったほうが・・・」とか、やきもきしながら前1/3部分は読んだ。
その後は、犯人捜しが始まるのだが、これも面白い。
なにせインターネットのない時代、人捜しに新聞広告を出したりする。
それで見つかったりもするので興味深い。
本文庫本には、2つの解説が付けられており、有栖川有栖氏の解説によると、『樽』は名作ミステリで、江戸川乱歩の「古典ベスト・テン」では9位になっているそうだ。
週刊文春による「東西ミステリーベスト100」では、1985年には7位、しかし2011年は33位とのこと。
調べてみると、これは国内編と海外編がある。そして、どうも2011年ではなく2012年のよう。
ちなみに、「東西ミステリーベスト100」の日本編1位は、1985年と2012年ともに横溝正史の『獄門島』。海外編1位は、1985年はエラリー・クイーンの『Yの悲劇』(2012年では2位)、2012年はアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』(1985年では4位)である。ほう・・・。
横道にそれてしまったが、本書『樽』が有名な古典ミステリであることは間違いがないだろう。
だが、私は知らなかった・・・。知れて良かった。
そして、有栖川有栖氏の解説によると、『樽』には「作中に大きなミスがある」とミステリファンに言われているとのこと。
それは・・・の部分を読んで、ビックリ。気になる方は創元推理文庫の新訳版で。
校閲はされていなかったのか・・・。気がつかなかったのか。
ふと以前読んだ『校閲ガール』、『校閲ガール トルネード』を思い出した。(まだ『校閲ガール ア・ラ・モード』を読んでいない!)
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先日、日本橋に所用があったので、榮太樓總本鋪日本橋本店でしか購入できないお菓子を求めようと思った。
調べてみると、少量でも予約したほうが良いとのことで、(本当に少量だったのだが)思い切って電話予約した。
「玉だれ」
こちらは作る曜日が決まっているようで、予約しなかったら購入できなかったかも。
説明書には「本場天城のわさびを用いた芯を求肥で包んだ、清楚な外観と上品な甘辛さ」とあるように、わさび味なのである。
わさびの辛さがなんとも美味しいお菓子なのであった。
・・・・菓子皿とのコーディネートは難しい。
黒い塗りのお皿が良いかも・・・。
そして、「楼(たかどの)」
こんな紙箱に入っている。
どどどーんと1つ入っている。
蓋の裏側が・・・。
こういうの「ぐっ」と来る。
これは一度に一人では食べられまい。
説明によると、高楼の礎石のイメージのよう。
1/4にして楽しんだ。それでも十分。
渋皮栗を黄身餡で包んだもの。
この黄身餡が、もう・・・何とも言えない食感というか、喉ごしというか。
日本橋は頻繁には行かないが、もし行くとしたら、この本店限定のお菓子を求めても良いなあと思った。
また、本店にはカフェもあり、こちらも気になる。